巻菱湖が清書した序文等 Ⅰ

江戸時代に刊行された書籍にも序文・跋文はたいていあり、現代の“まえがき・あとがき”の様なものになります。当時の序文・跋文は、文章を作る人と書く人が別の場合が多く、巻菱湖も友人などが作った文章の清書を数多く書いています。

2024年5月現在、菱湖が書いた序文・跋文掲載書籍は50点確認されており、その中には菱湖自身が撰・書したものも存在します。50点については書いた年代順に紹介をします。書いた年の記載のないものは刊行年等をその年に充てていますが、基本、末巻に刊行年の記載のないものは見返しの新鐫を刊行年に充てています。また、序文・跋文が書かれてから数年後の刊行年等のものも存在しており、それらのものに関しては刊行年が初版か否か等は不明です。書籍により序文・跋文を複数人が寄せているものもあり、合わせての紹介となりますが、不確定な人物に関しては記載を避け、日付のみとしています。

50点の中には、菱湖が版下も手がけたものもありますが、これに関しては立証が難しく、数種の先行文献の内容を見ても根拠が不明のため、ここでは、2016年・巻菱湖記念時代館刊行の『CHARISMA 〇ゴト 巻菱湖』を参考に紹介をします。

序文・跋文掲載書籍(50点)の他にも、菱湖が版下だけを書いたもの(2点)と書籍の題を書いたものや没後に題に使用されているものなど(4点)も附として「巻菱湖 書道文化遺産 ③:巻菱湖が清書した序文等 Ⅱ」の最後に合わせて紹介をします。

菱湖が書いた序文・跋文掲載書籍は「巻菱湖 書道文化遺産 ②:巻菱湖が清書した序文等 Ⅰ」と「巻菱湖 書道文化遺産 ③:巻菱湖が清書した序文等 Ⅱ」の前後での紹介となります。

また、掲載した書籍以外にも菱湖が清書した書籍をご存知の方は、是非、巻菱湖記念時代館へご連絡いただければと思います。

①『考槃餘事』享和3年8月刊行(1803年:巻菱湖27歳)

序文:享和3年小重陽 林述斎撰・書
跋文:享和3年8月 神谷東渓撰・巻菱湖書

②『小蓮残香集』享和3年9月刊行(1803年:巻菱湖27歳)

序文:享和3年8月2日 皆川淇園撰・書 / 享和3年8月 葛西因是撰・巻菱湖書 / 享和3年9月 曾占春撰
跋文:享和3年秋 北条霞亭撰 / 享和3年9月 蓬華仁尾永胤撰

参考:小蓮残香集 上(https://www.google.co.jp/books/
参考:小蓮残香集 下(https://www.google.co.jp/books/

③『近世奇跡考』文化元年刊行(1804年:巻菱湖28歳)

序文:文化元年5月龍生日 亀田鵬斎撰 / 文化元年仲夏 聴雨楼主人撰・巻菱湖書

参考:近世奇跡考(https://dl.ndl.go.jp/

④『方秋崖詩鈔』文化2年春刊行(1805年:巻菱湖29歳 / 序文:文化元年・巻菱湖28歳)

序文:文化元年冬至前一日 山本北山撰・巻菱湖書
跋文:文化元年

⑤『晩唐詩選』文化6年6月刊行(1809年:巻菱湖33歳 / 序文:文化3年・巻菱湖30歳)

序文:文化3年冬 亀田鵬斎撰・巻菱湖書

⑥『霞亭摘藁』文化4年3月以降刊行(1807年:巻菱湖31歳)

序文:文化4年3月 亀田鵬斎撰・巻菱湖書
跋文:文化3年冬 谷寵撰

⑦『晩唐十二家絶句』文化6年刊行(1809年:巻菱湖33歳 / 序文:文化5年・巻菱湖32歳)

序文:文化5年11月 葛西因是撰・巻菱湖書 / 文化5年臈月 亀田鵬斎撰・巻菱湖書 / 文化6年3月 市河寛斎撰・市河米庵書

⑧『佩文斎詠物詩選 初遍』文化9年3月刊行(1812年:巻菱湖36歳 / 序文:文化5年・巻菱湖32歳)

序文:文化5年12月28日 巻菱湖書

⑨『采風集 初遍』文化5年刊行(1808年:巻菱湖32歳)

序文:文化4年2月 菊池五山撰・市河米庵書 / 文化5年8月 亀田鵬斎識 / 文化5年嘉平月 山本北山撰・巻菱湖書 / 文化6年人日 大窪詩仏撰・巻菱湖書

『采風集 初遍』は文化5年刊行と諸文献等にも記載があります。大窪詩仏撰・巻菱湖書の序文は、文化6年の1月に書かれており、山本北山撰・巻菱湖書の序文も文化5年の冬に書かれていることから、恐らく実際の刊行日は、文化6年1月以降かと思われます。

⑩『画図酔芙蓉』文化6年夏刊行(1809年:巻菱湖33歳)

序文:享和3年2月 皆川淇園 / 文化6年3月 亀田鵬斎書
跋文:鈴木芙蓉述・巻菱湖書

草稿も合わせて掲載